バイク事故と「ハインリッヒの法則」を考えてみた。
偶然とも思われがちなバイク事故。そこには必ず日頃の運転との因果関係が存在する。
渋滞した道路を走る時、【すり抜け】をしたことがある人は多いだろう。
車を運転している側から言わせてもらえば、「危ない」以外の何者でもない。
しかし、渋滞路をすり抜けして目的地に早く辿り着けるのは、バイクならではの特権である。
ところが、バイクの【すり抜け】行為は、交通事故の大きな原因のひとつだ。
すり抜け以外にも、「対向車線のクルマが右折待ち」、「バイクが直進」で衝突する【右直事故】や、見通しの悪いコーナーで、センターラインを越えてきた【対向車を避けようとして起こる事故】など、バイクならではの事故と、バイクだったから起こる事故がある。
どちらの事故にしても、普段バイクで走っている時に必ず予兆があったはずだ。
その予兆に耳を貸さず、なんの対策もせずにいつもの様に走り続ければ、事故を起こしてしまうのは自明の理と言えるだろう。
ハインリッヒの法則とは?
医療や製造などの現場では、事故を未然に防ぐ必要性が高いことから、危機管理がよく研究されている
損害保険会社に勤めていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒは、ある工場で発生した数千件の労働災害を調査し、事故が起こる際の法則を見つけたのだ
【重大な事故】:【軽微な事故】:【ヒヤリ・ハット】=1:29:300の比率で事故が起こる、という法則だ。
【ヒヤリ・ハット】とは、事故にはならなかったが「一瞬ヒヤッとしたり、ハッとしたりする場面」のこと。
事故の発生比率が1:29:300の法則に則っているならば、この【ヒヤリ・ハット】を減らすことで【重大な事故】と【軽微な事故】が減るのだ。
つまり、大きな事故を起こさない為に、小さなミスを減らすことが大切なのだ。
1:29:300の「ヒヤリ・ハット」
1件の重大な事故には300件の【ヒヤリ・ハット】が隠れている。
優れた医療現場や製造工場では、この【ヒヤリ・ハット】の報告を大切にする。
ミーティングで話し合ったりすることで、重大な事故を未然に防ぐことを目的としているからだ。
【ヒヤリ・ハット】を報告し話し合うことで、関わる全ての人が正確な状況把握と原因を分析し、対策を立てるようになる。
そこから情報の共有化が生まれ、全員が共通の認識で行動出来るようになるのだ。
つまり、重大な事故→軽微な事故→ヒヤリ・ハットという順番で検証するのではなく、現場で起きているヒヤリ・ハットを把握して→原因を分析し→対策を立てることで軽微な事故を減らし、最終的には重大な事故を無くす、という考え方がハインリッヒの法則なのだ。
バイク事故を減らすためには?
バイクに乗っている時の【ヒヤリ・ハット】とは何だろう?
・渋滞した車を縫うようにすり抜けした時
・幹線道路を直進していて、右折待ちの対向車が飛び出して来た時
・路肩を走っていたら、並走していた車が急に左折して来た時
クルマと違って【ヒヤリ・ハット】の回数が多いバイクは、ハインリッヒの法則に当てはめると、やはり事故に遭う確率が高いと言える。
しかし、【ヒヤリ・ハット】の回数を減らすことが出来れば、重大な事故を無くすことが出来るのだ。
・停止している時以外はすり抜けをしない
・車の左側をすり抜けしない
・2車線あるなら追い越し車線を走らない(1車線ならなるべく左側を走る)
・対向車線の車を先に曲がらせる
・右カーブではセンターラインに寄らない
・見通しの悪いコーナーでは充分に減速する
ちょっとした事だが、いつもの習慣を変えるだけで【ヒヤリ・ハット】は減る。
【ヒヤリ・ハット】が減れば【軽微な事故】は減り、【軽微な事故】が減れば【重大な事故】は起こらないのだ。
バイク乗りは兎角、「危ない目」に遭うと、何事もなく無事にやり過ごせた事を自慢するが、無事にやり過ごせる【ヒヤリ・ハット】のうちに考え方を改めるべきだ。
【ヒヤリ・ハット】を軽んじているバイク乗りは、その先にある【重大な事故】の存在を知るべきだろう。
1:29:300のハインリッヒの法則は、事故は偶然ではなく必然と捉えている。この法則がバイク事故に100%当てはまるとは言えないが、永くバイクを愉しむための指針にはなるのではないだろうか。