「バイクの旅」といえば、体に風を感じながら颯爽と走り抜けるイメージかも知れないが、現実は違う。
山頭火の修行並みに過酷な旅である。
◇雨が降れば、カッパを着込んでもグシャグシャに濡れる。
◇夏場の炎天下では、アスファルトの照り返しとエンジンの熱でサウナ地獄。
◇凍てつく寒さは、指先とつま先の感覚を忘れさせる。
そんな過酷なバイクを選んで、「なぜ人は旅をしようとするのか?」
乗ったことがない人間からしてみれば、バイク乗りはマゾか?阿保か?くらいにしか思われないのに。
「それでもバイクが良い」ホントの理由
◇寄り道が好き
◇渋滞が嫌い
◇その時の一瞬の景色を見逃したくない
◇自然を肌で感じたい
◇本当にマゾ🤣
ソロで旅するバイク乗りは、基本わがままだ。
◼️好きな時に好きな処に行きたい。
◼️気に入った場所で誰にも邪魔されずに佇みたい。
もっと言うなら、「自分の気の赴くまま生きたいと願っている人間」が多いのだ。
その為なら、雨が降ろうが槍が降ろうが、旅にはバイクをチョイスする。
自由を求め、非日常を愉しむ為だ。
快適ばかりが最高ではない
◇雨が凌げる
◇エアコンが付いている
◇疲れにくい
旅に行くなら、これくらいの機能は最低限付いていた方が良い。
天気や気候を選べる旅なら良いが、休みに合わせて旅をしなければいけないサラリーマンは、常に天候に左右される。
そんな状況下でも、わざわざバイクで旅に出掛ける理由は、ひとえにバイクで旅をすることの喜びを知っているのに他ならない。
雨に打たれるから、晴れの日の有り難みを知る。
真夏の暑さを走るからこそ夕暮れ時の涼しさを、真冬の寒さを走るからこそ小春日和の暖かさを知る。
振動で痺れた腕や手を感じるからこそ、今日の旅路を実感する。
快適な乗り心地も、快適な装備もないバイクだから感じ取れる世界があるはず。
エアコンもテレビや音楽もなく、雨に打たれたり風に吹かれていると、だんだんと感覚は研ぎ澄まされ、見える景色は変わっていく。
五感は研ぎ澄まされ、風や空気や温度にも敏感になる。
そんな風に身体も精神も解放したいなら、快適とはいえないバイク旅も愉しいと思えてくる。
昔の旅人に想いを馳せる
江戸時代に日本各地を旅し、日本地図の礎を作った人をご存知かと思う。かの伊能忠敬である。
伊能忠敬は、53歳から71歳にかけ17年間、北は北海道から南は九州まで、全国を旅して日本全図を作った人だ。
当時の旅の大変さは知る由もないが、歩幅をもとに距離を測量していたということは、旅の全工程を徒歩で行ったのは言うまでもない。
道の駅もコンビニもない時代、雨の日も、夏の暑さも冬の寒さにも負けず、自然を相手に17年間も旅を続けたのだ。
そんな彼の体力と意志の強さには甚だ感服する。
バイクでの旅もこれに似ている。
目的は違えど、昔の旅人は命懸けで全国を渡り歩いていたはず。
当時の移動手段は、徒歩を始め駕籠や馬しかなかったと思うが、その過酷さは想像に難しくない。
雨が降ろうが雪が降ろうが、真夏の暑さからも真冬の寒さからも逃れる術は無いのはバイクも同じだ。
苦労した旅ほど思い出深いもの
バイクでの旅は、そんな伊能忠敬の旅に想いを馳せる。
歩いて旅した彼ほどではなくても、自然の厳しさを噛みしめ、自然の美しさや荘厳さを感じながら毎日を振り返ることは、バイクを使った旅も同じこと。
どんなに辛く大変でも、200年以上も昔に歩いて旅した彼らに比べれば、現代のバイク旅の苦労なんて大したことはない。
振り返って愉しかった思える旅とは、辛ければ辛いほど、大変であれば大変であるほど思い出深く、喜びに満ちてる。
そんな旅を心の底で望むからこそ、バイク乗りは過酷なバイク旅に出掛けるのかも知れない。